柏木博『モダンデザイン批判』

モダンデザイン批判

モダンデザイン批判

 著者はムサビの教授。書き下ろし。以下メモとか。

  1. 思考する《もの》 近代におけるものは視覚的イメージを用いたコミュニケーションツールであり、言語と同じくらい重要。デザインはものを扱う。
  • 近代は何をめざしたか 近代の理想は人間主義。「誰でも等しく」がキーワード。スラム(貧困)をなくす為に都市計画がされ、健康のために料理学校が作られた。「誰でも等しく」を体言するのがバウハウスの普遍的デザイン。
  1. 消費される欲望 広告=デザインが欲望を組織化する。個人主義
  2. 廃棄か回収か 家事に関する教育は衛星と健康の為に始まった。廃棄のグローバル化(経済的に豊かな国が商品を受け取り、貧しい国がごみを受け取る)。リサイクルはシステム。
  3. モダンデザイン批判を批判する カウンターカルチャーポストモダン。近代の理想の挫折と問題の回避。
  4. デザインするアメリカ フォーディズムは重要。アメリカ式生産=消費様式は冷戦を背景に発達し伝播した。インターネットはアメリカ化、グローバル化だ。
  5. モダンデザインの彼方へ モダンデザインは近代の理想を体現し、挫折した。システムの一元化はあぶれる人を生み出すからだ。だからといってモダンデザインを否定するのではなく(ポストモダン)、意味を再解釈してリサイクルする必要がある。

 もの・デザインの観点から哲学書などを引用しつつ近代史をまとめてみたといった趣の本。テーマは硬めだけど、文章が読みやすいので新書を読む程度の集中力で一応読み通せた。図版が少ないので、その辺はネットか図書館でカバーする感じで。

 消費という言葉の語源について書いてある箇所があって、面白かったので引用しておく。注を読むとスチュアート&エリザベス・イーウェン『欲望と消費』(小沢瑞穂訳)を引いているらしいので孫引用ですが。

 レイモンド・ウィリアムズの研究を引きながら、スチュアート・ユーインは、「消費する」という言葉はフランス語が起源で、元は略奪を意味していたのだと説明している。また消費という言葉は、「完全に取り上げる」「むさぼり食う」という意味で使われたのだという。破壊し、浪費し、枯渇させるといった悪しき意味を持っていた。現在でも、結核を意味するコンサプション(consumption)は消費という意味でもあり、その悪しき意味を遺している。それが、十七世紀に世界市場経済が広がっていく中で、「使い切る」ことが商業的繁栄を意味するようになり、好ましい意味を持ちはじめた。現在、アメリカ的消費社会の中にあって、消費という言葉は、まったく悪しき意味は失われ、むしろ肯定的に使われている。

欲望と消費―トレンドはいかに形づくられるか

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 サブテキストとしてこれもぱらぱらと眺めてみた。イメージを大まかに掴むのに役に立った。

バウハウス (タッシェン・建築デザインシリーズ)

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